魚豊氏による「チ。-地球の運動について-」は、2020年から2022年までビッグコミックスピリッツで連載された漫画作品です。
禁じられた地動説を研究する人々の決死の人生が描かれたストーリーです。
これがもう本当に面白くて、軽い気持ちで読み始めたのですが、一気に読んでしまいました。
アニメ化もしているので、是非見てほしい作品の一つです。
そんな作品ファンの私が、読破後、疑問に残ったこと等云々を調べ纏めてみました。
「チ地球の運動について」主人公は誰?
「チ。-地球の運動について-」の物語を読んでいて、まず始めに、私は疑問に思ったのです。
え、主人公、誰!?w
ネタばれになりますが、主人公だと思って読んでいたら、スッと死ぬのです、主人公が。
まずそこでビックリしました( ゚Д゚)。
この作品の主人公は、言わば「地動説」なのです。
地動説にまつわる、巻き込まれた人々を描いたストーリー構成なので、「主人公」と言っていいのか分かりませんが、地動説の探求を受け継ぐ複数の人物を「主人公」だと捉えて、主人公を纏めていきます。
「チ。-地球の運動について-」主人公一覧
第1部:ラファウ
物語の序盤では、飛び級で大学進学を認められた12歳の神童、ラファウが主人公として登場します。
彼は周囲の期待に応え、当時最も重要とされていた神学を専攻すると宣言しますが、天文学への情熱を捨てられずにいました。
ある日、異端思想に触れたため投獄されていた学者フベルトと出会い、彼から地動説の仮説を教えられます。
ラファウはその説の美しさに魅了され、地動説の研究に身を投じることを決意しますが、密かなる研究がバレる。異端思想だとされて、異端審問官のノヴァクによって死刑。(実際には自殺)

とても賢い少年。
彼が主人公だと思って読んでた
から、ビックリしましたよ。。
第2部:グラス
ラファウの死後、物語は10年後に移り、代理剣闘士のグラスという新たな主人公が登場します。
彼は火星の逆行を観測し、天動説では説明できない現象に疑問を抱き、独学で研究。
グラスは馬車の中で会った異端者から地動説にまつわる話を聞き、その説に惹かれます。
その為、ノヴァクら異端審問官からその異端者を庇ってしまい、グラスらは追われる身となり、逃走中に橋の崩落によって転落死。

主人公が死ぬのが早いんよ。。
第3部:オクジー
次の主人公はオクジーです。
オクジーは前主人公のグラスと共に代理剣闘士で、グラスが転落する瞬間に、地動説引継ぎのキーとなった球体のネックレスを受け継ぎました。
彼は地動説への探求を引き継ぐというよりは、巻き込まれた形ですね。
超人的な視力を持ちながら、怖くて星空を見られなかった彼は、最初は地動説に惹かれたわけではない。でも、修道士のバデーニやピャスト伯、ヨレンタとの出会いで変わっていきます。
満ちた金星の観測は、天動説の大家ピャスト伯自身の人生の全てと言える研究が間違いだったことの証明。その歴史的瞬間の場に立ち会った、いやむしろ、満ちた金星を視認できるのはオクジーだけ。
オクジーは地動説、それにまつわる人々に心動かされていくのですよね。
それにしても、ピャスト伯の勇気ある行動にも胸を打ちます。
字が読めなかったオクジーはヨレンタから文字を学び、地動説の証明に向けた書籍を執筆します。

知ることの喜びを知ったオクジー。
感動しました(´;ω;`)ウゥゥ
真理に触れる感動は何にも替えられない
ものですよね。
ヨレンタの「文字は奇跡」という言葉も良い!!
第4部:バデーニ
オクジーの後を継ぐのはバデーニ。(後を継ぐというよりは同時主人公?)
ピャスト伯から惑星観測記録を得たことで、バデーニは研究を進めていきます。
問題に直面していた彼は、オクジーの球体のネックレスからヒントを得て、惑星の軌道が楕円であることを発見。地動説の理論を完成させます。
バデーニの研究は、地動説の確固たる証拠となり、後世の科学者たちに大きな影響を与えます!

バデーニとオクジーの最期は必見です(´;ω;`)ウゥゥ
ノヴァク、、、ここでもか。。。
第5部:クラボフスキ
バデーニの業績を受け継ぐのは、クラボフスキという主人公。
天才バデーニは、地動説の原稿を、貧民に入れ墨を入れることで残したのです。
地動説についての原稿を焼かれても、バデーニやオクジーの身に何か起こったとしても、貧民に書かれた入れ墨によって残すという!流石だ、バデーニ!!
貧民は、パンをくれる人(オクジー)が来なくなったら行くようにと言われており、その行先がクラボフスキのところだったのです。
明記されていませんが、恐らくクラボフスキの努力によって、入れ墨で残された地動説は何かしらの形で残されていきます。

ここでもやってくれたわ、バデーニ!
本当に天才なんだろうね。
第6部:ドゥラカ
物語はさらに25年後に進みます。( ゚Д゚)
ドゥラカという主人公が登場します。
移動民族の彼女は「不安がなくなるまで金を稼ぐ」という信念を持つ、聡明な少女。
偶然にも「地球の運動について」の写しを発見し、その内容に感銘を受けます。
信仰心ではなく、「お金の匂いがする」ってやつです。
このネタで儲けられそう!ということで、「地球の運動について」の出版を目指します。
ドゥラカは地動説を守ろうと奮闘するも、ノヴァクら異端審問官から逃げきれずに命を落とします。

ノヴァクめ、、、( ノД`)シクシク…
ドゥラカはとても頑張ったけど、
地動説はどうなる?!途絶えた?!
第7部:アルベルト
最後に登場するのは、アルベルトという主人公です。
1468年に大学に入学した彼は、偶然「地球の運動について」のタイトルを耳にします。そこから地動説に興味を持ち始めるのです。
アルベルトの本名はアルベルト・ブルゼフスキ。 なんと、彼は1400年代のポーランドに実在した人物です。
主に天文学、数学を教える大学教師で、教え子にコペルニクスがいます。後に、コペルニクスは地動説を唱えました。

ドゥラカからアルベルトへの伝わり方が
タイトルくらいなのかな?そこがもっと
詳しく知りたい気持ちも、、!
「チ地球の運動について」ラファウ死亡?
上述したように、物語の序盤の主人公と見られるラファウ。
大変優秀で将来を期待された少年だが、地動説に魅了されてから、順風満帆だった人生が揺らいでいく。
異端審問官ノヴァクに捕らえられた後は、自ら毒を飲んで命を絶ちます。
しかし!!物語の後半で、ラファウが再び登場する展開があり、読者の間で議論を呼んでいます。
ラファウの再登場は、8巻第60話で描かれています。
なんと、青年となったラファウが、アルベルト少年の家庭教師として現れるのです。

ん?ラファウ死んでなかった説!?
彼はアルベルトの知的好奇心を見抜き、議論の場への参加を勧めます。一方で、アルベルトの父親との意見の対立から、最終的にアルベルト父を殺害。

いや、、ラファウではない、、かな。
私の知ってるラファウではない、、気が。
この再登場したラファウが、序盤で命を絶ったラファウと同一人物かどうかについては、さまざまな解釈が存在します。
一部では、ラファウが火刑を逃れて生き延びたとする説もありますが、物語の時間軸や年齢設定から考えると、辻褄が合わない点が指摘されています。
例えば、1巻で12歳だったラファウが、その後の時間経過を考慮すると、再登場時には47歳前後であるはずですが、描かれているラファウは20代の青年のように見えます。
この矛盾を解消するために、パラレルワールド説が提唱されています。
物語の舞台設定が、1巻では「15世紀(前期)P王国」と曖昧にされているのに対し、8巻で「1468年ポーランド王国」と具体的に記されています。
また、最終巻の表紙デザインが他の巻と異なり、漆黒の星空となっている点などが、その根拠とされています。

1巻から7巻はフィクション、8巻は
実在した人物(コペルニクスとか)も
出てくることから、分けてるのかな?
もしくはパラレルワールド?
さらに、作中でアントニ司教がノヴァクに「君や、君が担当した”異端者”達、君らは歴史の登場人物じゃない」と語るシーンは、物語が異なる時間軸や世界線を描いている可能性を示唆しています。
タイトルの『チ。』には、「地(地動説)」「知(知識)」「血(命)」の3つの意味が込められており、ラファウはこれらを象徴する存在として再登場した、つまりラファウであってラファウではない、という説も。
因みに、ノヴァクが死ぬ間際もラファウと会話しますが、これは亡霊もしくはノヴァクの頭の中に出てきた妄想だと解釈!
ラファウというキャラは、物語全体のテーマやメッセージを強調する役割なのかもしれませんね!
「チ地球の運動について」オクジーは?どうなった?
第2章の主人公であるオクジーは、全ストーリーを読み上げた今見ても、心に残るキャラでした。
ネガティブ思考の代闘士として描かれ、地動説の資料を手にしたことで運命が大きく変わっていく重要人物。
彼は修道士バデーニや天文研究助手のヨレンタと出会い、地動説の探求に深く関わっていくのですよね。
しかし、教会の圧力や内部の裏切りにより、彼らの研究は困難を極め、最終的には教会の手によって命を落とすこととなり、悲劇的な結末を迎えます。そして、その後の物語には登場しません。

他者を受け入れないような天才バデーニ
との関係性の変化、そして二人の最期は涙!
しかし、彼の探求心と信念は後の世代へと確実に受け継がれていったと思います!
文字が読めなかった彼が書いた地動説にまつわる書物。
それが、ドゥラカまで伝わり、その後もきっと細々と、脈々と後世に伝わったと信じたい!
1468年にアルベルトが耳にした本は、恐らくオクジーが書いたものが伝わり続けた書物のはず!
そして、アルベルトの教え子であるコペルニクスが地動説を唱えるところまで繋がったのですね。
「チ。―地球の運動について―」は、地動説を巡る人々の情熱と葛藤を描いたフィクション作品なのですが、最後に実在人物であるコペルニクスが地動説を解明するまでに至る、この壮大なストーリーは何か現実味を帯びていて、本当にあり得たかもしれないと思わせますよね!
「チ地球の運動について」ノヴァクは?ヨレンタと再会できた?
ノヴァクは異端審問官として、教会の教えに反する者たちを取り締まる立場にあります。
第1巻から7巻まで、様々な主人公の命を落としてきた人物ですが、彼もある意味、このストーリーの主人公の一人だと言ってもいいかもしれません。
バデーニとオクジーと関わった娘のヨレンタは、皮肉にも、地動説に関わるようになります。

聡明な彼女は、バデーニとオクジーの死を知り、
自分が地動説を伝えることに人生を賭けます!
「異端解放戦線」の組織長として、最新の活版印刷技術を用いて地動説を広め、教会の不正を正そうと活動するのです。
自分の父親が、バデーニとオクジーを死に追いやった異端審問官であること、異端だとされる地動説を自分が広めようとしていること等、とても複雑な環境におかれた彼女。
しかも、父親であるノヴァクは、ヨレンタは異端者として同職者から処刑されて死んだと思っているのです。

読み進めている時、この二人は
果たして再会することが出来るのか、
めちゃくちゃ気になって読んでました!
ノヴァクとヨレンタの直接的な再会は、第20話で描かれています。
異端解放戦線のアジトに迫るノヴァクの追及に対し、ヨレンタは一人アジトに残り、仲間たちを逃がすための時間を稼ごうとします。
この際、ヨレンタは父であるノヴァクと対峙しますが、最終的には自ら松明を落とし、大爆発を引き起こして命を絶ちます。
本当に一瞬、その松明を落とした瞬間、どうか二人が互いを認識してほしい、最後に一目だけでも会わせてあげたい、、と願ってしまいました。
主人公を死に追いやりまくったノヴァクだけどもw、やっぱり娘には会わせてあげたかった!
ノヴァクは、恐らくヨレンタも、互いが家族であることには気づかず( ノД`)シクシク…
ノヴァクは、爆破で吹き飛んだその娘の腕を、「異端解放戦線」の組織長が死んだ証拠として、持ち去ります。
そしてノヴァクの最期、その手を自分の娘の手だと見立てて、ヨレンタの遺品として持っていた手袋をはめるんですよね(´;ω;`)ウゥゥ

これは悲しかった。。
ノヴァクのやってきたことが許せなくても。
「チ地球の運動について」考察まとめ
いかがでしたでしょうか。
8巻で終わってしまったのが名残惜しかったのですが、内容としては続けようがないですものね( ノД`)シクシク…
でもドゥラカからアルベルトに伝わるまでのストーリーをもっと見たかった!というのはありますね。
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